2011年01月22日

サブウーファーの解説part.4|応用・実践編

第四回|応用・解説編


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image by vancouverfilmschool

これまで3回にわたり、サブウーファーについての記事をお届けしてきました。最終回である今回は、前半で少し詳しく用語を解説し、後半では弊社の取り組みをご紹介します。

項目の解説は、音響理論を知らない方、「あまり理科は得意じゃないんだけど・・」という方にでもわかるようにしています。概念が伝わりにくいものは、図を入れて説明しています。
もっと書きたい内容はあるのですが、できるだけ重要な部分だけを抜き出して解説してあります。記事を読むことで、興味を持つきっかけになれば嬉しいです。
おさえておきたいキーワードはだいたい出ていますから、それをネット検索して頂ければ、さらに詳しい知識を得られると思います。
こういう解説の方がいいんじゃないの?と思われるところもあるかもしれません。そういう時はコメント欄にてご教示頂けると、修正・追記させて頂きますので、ぜひともよろしくお願いいたします。


密閉型とバスレフレックス型

覚えておきたい基本の2つ
スピーカーシステムを大きく分類するとき、まず「スピーカーの形状」で分けることができます。
一般的なスピーカーに多いのが、「密閉型」と「バスレフレックス型」です。後者は「バスレフ」と略されます。この2つはまず覚えておきましょう。他にも、ラッパの形状を思わせる「ホーン・バッフル」、磁気回路やボイスコイルを持たない「ドローン・コーン」などもあります。
なぜ様々な種類の「カタチ」が存在するのか?
これはつまるところ、「低域をどう取扱うか」の違いと言い換えることができます。はっきり言って高音だけなら、こうもエンクロージャー(箱の部分)をあれこれやらなくても良いわけです。
「どうやったらうまく低域を出せるか」を試行錯誤して現在の状況に至っています。

なぜ"箱"が必要なのか?
答えは、
「スピーカーユニットの裏側から出ている音を囲い込むため」です。
もちろん、要らない音だから囲い込んでしまうわけです。「要らない」とする理由は、その音が「逆位相」だからです。詳しい解説は割愛しますが、「音は波だ」と中学・高校で習ったと思います。波は高いところと低いところがありますが、高いところが来て欲しい時に低いところ、低いところが来て欲しい時に高いところと、逆転している状態を「逆位相(逆相)」と言います。

gyakuso.png


スピーカーユニットは前後にピストン運動をして音波を作ります。CDなどの音源から来た電気信号は、つまりこの運動を指示しているわけです。逆相の状態とは、元の信号とは逆の振る舞いになっていますから、音響的に不都合になるわけです。

"もったいないので使う"のがバスレフ
逆相状態の音波と云えども、エネルギーには違いありません。そこで、それを利用したのがバス・レフレックス(bass-reflex)です。
ユニットの背面より発生した音波は、出口を求めて空気の柔らかい方へ逃げようとします。エンクロージャーに穴があいている場合、そこを通って外へ出ていきます。
口笛でもなんでもいいのですが、笛を想像してみてください。空気の通り道(唇の形など)を変えることで、音の高低が変化しますよね?同じように、エンクロージャーにあけた穴の形を調整することで、低域の音のみを増強することができます。
この原理を使うことで、ユニット背面から出たエネルギーを、低音増強に利用しているというわけです。

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この時、音が外に出るまえに、位相が「正相」に戻るよう音道をつくっています。従ってユニット背面から出た「要らない音」は、一応は正しいかたちで空間に放射(輻射)されます。

バスレフは価格的に有利
お分かりの通り、バスレフ型は背面のエネルギーを利用するため、容易に低音を出すことが可能です。これは、あまりコストをかけられない製品にはメリットの多い仕組みです。

<メリット>
・高性能なユニットを使わなくて済む
・エンクロージャーの強度が要求されない
・小型のエンクロージャーでも低音の再生が可能
→収まりのよい、普及価格帯に多い
密閉は音質に有利
エンクロージャーを密閉すると、その内側と外側で「空気のかたさ(スティフネス)」が異なり、ユニットの運動に影響を与えます。こうした阻害要因があるものの、ユニットからの音を純粋に輻射する音響的メリットは高く、またスティフネスの抵抗に対し、電気的に補正する機能を搭載した製品もあります。

<メリット>
・ユニット正面からの音だけを輻射できる
・背面の逆相音波からの干渉をうけない
・いわゆる"音の遅れ"感が少ない
→音質を重視した、高級機に多い
少し意識してみる
正直サブウーファーは外見上ただの箱みたいで、なぜこんなにも価格差があるのか不思議になるものです。
そこでまずは「密閉型」と「バスレフ型」の二つがあることを覚えて、それを意識して製品を見比べてみてください。
一般的には、高級機は「密閉型」であることが多いようです。理由は、やはり高性能なユニットや頑丈なエンクロージャーへのコストでしょう。簡単に言うと材料費です。
デメリットについてはあえて詳しくは申し上げませんが、バスレフ型でよく言われるのは独特の「風切り音」です。
こうしたスピーカーの形式がわかるようになれば、「これは密閉型なのに安いなあ(なんで?)」「うちはスペースが狭いから小型のバスレフだな(でも音は?)」といった考え方ができるかもしれません。そしてその製品の値段が、一体どの部分のコストについているのかを知る判断材料にもなるでしょう。


内蔵アンプの出力

パワー不足には注意が必要
専用のアンプがもともと入っているアクティブ型サブウーファーの場合、仕様表にはそのアンプの出力が記されています。
低い周波数の音をだすためには、より多くのパワーが必要となります。従って、アンプの出力も500W・1000Wといった高出力のものが搭載されます。
この出力に関しては、大は小を兼ねるので、基本的に大きいに越したことはありません。視聴空間が広い場合、あまり出力の高くないアンプですと音量不足になるかもしれませんので、そこは注意が必要です。

デジタルアンプの注意点
現在の高出力アンプは、ほぼ全てがデジタルアンプです。(それ以外の製品は見たことないです)
製品を品定めするときに、出力がいくつかは対して重要ではありません。が、一つ注意しておきたいのが、デジタルアンプから発生するノイズです。
このノイズは、100Vの電源を通して他の音響機器にわるさをします。特にデジタルアンプはこのノイズがひどく、高音質なホームシアターを望んでいる方であれば、対策が必要でしょう。

digital-noise.jpg


もっとも簡単な方法としては、プレーヤーなど他の音響機器が接続されていない、別系統の電源を使うことです。これはデジタルアンプ内蔵のサブウーファーだけでなく、冷蔵庫やパソコンなど、高ノイズの発生源となる機器すべてに共通することです。
デジタルアンプは安価に高出力を実現できます。逆にアナログアンプは音質的に有利とは言われるものの、効率が悪く、高コストになりがちです。サブウーファーにデジタルアンプが採用されるのも、売り物として製品化するには仕方のないことかもしれません。
ちなみに、今回紹介している製品群のうち、最高級の部類に入る製品でもデジタルアンプが使われています。

「デジタルアンプのノイズ」については、あまり巷では言われていません。読むかたによっては、眉に唾をつけながらお読み頂ければと思います。


ユニットの口径

キャラクターに違い
ご存知の通り、低い周波数の音(低音)を出すためには、大きい口径のユニットが有利です。
もちろん口径の小さいユニットでも、低い周波数の音を出すことは可能です。それでは、大・小のユニットで同じ周波数の音を出す場合、どこに違いがあるのでしょうか。
それは、音のキャラクターです。
当然と言えば当然ですが、ユニットの口径が違えば、空気を一度に押しだす面積が違ってきます。小さいユニットが、一回のアクションで多くの空気を動かそうとすると、必然的にストロークが深くなります。

stroke.png


こうした物理的な振る舞いが違うわけですから、同一の周波数であっても、音色・音質というのは、当然変わってくるわけです。
また振動板の面積が狭いと、原理的に低い周波数を再生できません。
従って、15Hzというような超低音を再生したい場合は、大口径のユニットが絶対に必要となってきます。


再生周波数帯域

その製品の基本能力
再生周波数帯域とは、読んで字のごとく、その製品が再生できる周波数の範囲です。
音の周波数は、数字が小さいほど低い音、数字が大きいほど高い音に聴こえます。ちなみに人間が聴くことのできる周波数帯域(可聴域)は、20Hz ~ 20,000Hz(2kHzとも表す)と言われています。
サブウーファーの仕様表には、例えば18Hz ~ 160Hzというふうに書かれています。小さいユニットのサブウーファーでも、きちっと低域が再生できるかは、この項目を見るとわかります。
前述の通りですが、バスレフ型のスピーカーは低域を構造的に増強しています。従って、小さいユニットを搭載している製品でも、再生周波数帯域を見ると、なかなか低いところまで再生できている製品もあります。
ただし数字の上では低い周波数まで再生されていても、聴感上の聴こえ方は別だと考えるべきです。


クロスオーバー周波数

車でギヤチェンジできる人?
ホームシアター入門者にもっとも多い質問が、このクロスオーバー周波数です。これは知らなくて当然です。
「クロスオーバー周波数」を自動車にたとえると、AT車しか知らない、乗ったことない人にとってのトランスミッションのようなものです。とりあえず「D」にいれてアクセルを踏めば適切なところで勝手にギヤは変わってくれるわけですから、まずギヤそのものの存在を認識しませんよね、ふつう。
一般的なスピーカーは、簡単に言えばAT車と同じで、それぞれのユニットが受け持つ周波数帯域を、メーカーが事前に割り振ってくれています。
だからMT車のように「トルクが必要な時にはトップで、次にセカンド・・」というように、「18Hz ~ 1000Hzまではウーファーに、800Hz ~ 5000Hzまではスコーカーに・・」という割り振りを自分でやる機会がないのです。だから、知らなくて当然です。

MT車はなぜおもしろい?
車の運転がお好きな方であれば、MT車でギヤチェンジする楽しみをよくご存知だと思います。
連載第一回目でも触れましたが、スピーカーユニットには一般的に受け持ちの周波数帯域があります。従って「ここからここまではアナタ」という役割を指定します。
もちろん800Hzでウーファーがぴたっと鳴り止んで、それ以上からは別のユニットが・・というわけではなく、複数のユニットがクロスオーバー(重複)している帯域が存在します。それを調整してやるのが、「クロスオーバー周波数設定」です。

crossover.jpg


このクロスオーバー周波数の設定ができると、思い通りの役割をスピーカーユニットに与えてあげることができます。なんだかたとえに無理がでてきましたが・・つまりMT車を楽しむのと同じようなことが可能というわけです。

クロスオーバー設定でもっと楽しく!
とりあえず無理に車にこじつけると、シチュエーションによっては早くトップギヤから抜けたいとき、というのがあると思います。その逆のパターンもありますね。
ホームシアターでサブウーファーを使用するとき、「もう少し低い音の時だけ動いて欲しいんだけど・・」という事があると思います。逆にフロントスピーカーでの低域の受け持ちがあまりできない場合、「比較的高いところでの低音」をサブウーファーに受け持たせたいというニーズもでてきます。
そうした要求に対応するのが、クロスオーバー周波数の設定機能です。ようやく結論を言えました。
オーディオ分野に精通している人がよく、「つながりが良い」と言う時があります。「つながり」って何かと言うと、「クロスオーバー」のことです。
つまりここの設定を追い込んでやると、ユニット間のクロスオーバー、ダブり・ダブつきが改善され、より「つながり」の良い音にすることができるわけです。

クロスオーバー設定機能のある製品を!
音は物理現象ですから、視聴する空間(部屋)によって非常に左右されます。従って、ご自身の視聴環境にあった低音の出し方が必須です。クロスオーバー周波数の設定が可能な機器を選ぶことは、もはや当然のことのように思います。


外寸と重量

想像以上のサイズにご注意!
サブウーファーは、ご存じの方も多いと思いますが、動いてないときはただのデカい箱です。
KEF社のフラッグシップモデルModel 209を見てみると、W:629mm(幅)x H:530mm(高さ)x D:629mm(奥行)です。約60cm x3辺の直方体ですから、かなり大きいですね。ちなみに60cmというと、一般的な成人男性の腕(肩から手首)ぐらいでしょうか。
これをご家族に言わずリビングにどーんと置くと、家族会議です。専用ルームをお持ちの羨ましいご諸兄の方々であれば問題はないかもしれませんが。
よく言われることですが、日本の住宅は狭いため、やはりコンパクトな製品にニーズがあります。基本的に各メーカーはそれに応えてくれています。Model 209のように音質を追求している製品は「密閉型・大口径ユニット採用」と、サイズにも値段にも糸目を付けていませんが、普及帯のものであれば、ちゃんとスペースファクタは考慮されています。
とは言っても、やはり普及帯の製品でも"大きい箱"には変わりなく、また重量も数十キロというのはザラです。小さいものが有り難いけど、やはり音質的にはある程度のキャビネット容積は必要になってくるため、頭の痛いところではあります。


まとめ

さていかがでしたでしょうか?連載の一回目から読んでくださった方は、かなりサブウーファーの知識が増えたのではないでしょうか。

冒頭で「弊社の取り組みをご紹介する」としました。そのつもりだったのですが、ちょっと一つの記事では長すぎるので、連載記事をもう一つ増やすことにします。
ということで、弊社のショールームのサブウーファーについては、ぜひ次回をご期待頂きたいと思います。前フリをしておきますと、
弊社のリスニングルームでは、サブウーファーに米国Electro Voice社の76cmウーファーを2つ壁面に埋め込んで使用しています。構成としては5.2chサラウンドとなり、サブウーファーが2つのシステムです。
サブウーファーが2つ必要かどうかは、議論のあるところです。
弊社では、吸音材の設置やクロスオーバーの調整などにより、現状ではうまく調整できています。ご興味のあるかたは、次回の記事で詳しくご紹介いたしますので、引き続き当ブログの更新をフォローして頂ければと思います。

フォローというと最近ではTwitterですが、弊社ではアカウントの運用をしていないため、大変恐縮ですがRSSリーダーのご利用をお薦めしております。

<ご参考>
・Livedoorリーダー
・Googleリーダー

RSSリーダーでのブログ購読は本当に便利なので、ぜひまだ利用していないかたは試してみてください。近いうちに、「RSSを利用したオーディオ情報の集め方」を記事にしようと考えています。こちらもご期待ください。

written by Kyo_Yamada
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posted by HCA at 14:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | ホームシアター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> ちなみに人間が聴くことのできる周波数帯域(可聴域)は、20Hz ~ 20,000Hz(2kHzとも表す)と言われています。
20,000Hz = 20kHz かと。

連載第1,4回は非常に分かりやすく、「サブウーファーのなんたるか」が分かったように思えます。
ご執筆ありがとうございます。
Posted by 畑違い at 2015年09月09日 23:51
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