2010年11月20日

ホームシアタープロジェクターを購入する【調査編】

プロジェクター購入のポイント ~調査編~
今回は「調査編」と題して、実際の購入プロセスを想定した記事を書いてみようと思います。

私も一人の消費者として、何かを購入するときはインターネットを使って下調べをします。ファッションなど他の分野に比べて、家電製品やパソコン機器はネットでのクチコミ情報が豊富です。また家電製品など電気機器の場合、「見て・触って」の定性的な最終判断が必要なものの、わりあい、「機能・仕様」など定量的な判断が可能なこともあります。もちろん、一番重要なのは自分の目で確かめることですが、それもクチコミ情報である程度フォローできるようになってきました。

余談ですが、最近はネットでの下調べが増えたものの、依然としてファッションは雑誌が主な情報源です。個人的な感想ですが、ファッション分野の雑誌は、あまり情報や評価に変なバイアスがあまりかかっていないから気にいっているのかなあと思います。VOGUEに代表される長い歴史が持つ、ファッション誌業界のプライドとか誇りを感じる気がします。

前置きが長くなりましたが、以下でインターネットを使っての下調べをまとめます。実際の店舗へ行く前に、持っておく情報をさらに強化しましょう。


下調べ:「価格」を知る
価格は、そのモノの価値を最も効率よく、平均的に知ることができる唯一の指標です。とても便利です。何を当たり前のことを、と感じるかも知れませんが、最初に価格帯をきちんと把握しておくことで、製品の性能やグレードがだいたい頭に入ります。情報の整理がしやすくなります。ですから、ここでは「自分が買える範囲」を測る指標ではなく、プロジェクター製品の性能・グレードを測る指標として役立ててみてください。

下図は、前回でもとりあげた国内4メーカー/16機種の価格分布です。

price-graf.png

(CC=BY, ND)
図中左から、
JVC | HD550 / X3 / HD950 / X7
SONY | HW15 / HW20 / VW85 / VW90ES
EPSON | TW3600 / TW4500 / R1000 / R4000
MITSUBISHI | HC3800 / HC6800 / HC4000 / HC7000

こうして俯瞰すると、各メーカーがどのようなプロジェクターをつくっているかがわかります。こうしたメーカーのポジションを地図化して、頭に入れておくと整理がしやすいと思います。

<参考になるサイト>
価格.com | プロジェクター

下調べ:「仕様」を知る

仕様については、数字で把握したほうが良いものや、時と場合であまり変化のないものをピックアップします。

・寸法
もしプロジェクターの設置場所が決まっていたら、寸法的に設置が可能か確認してください。特にラックなどに収納する場合は注意が必要です。据え置きにせず、使わないときは別の場所に置いておこうと考えている場合は、できるだけコンパクトなものが良いでしょう。また持ち出すことも考え、軽いものが適当です。
参考例:
MITSUBISHI LVP-HC4000 345×270×129mm(幅×奥行×高さ)
JVC DLA-X7 455×472×179mm(幅×奥行×高さ)

・重量
プロジェクターは、特にホームシアター用のプロジェクターは、意外に大きく、重いです。例えばJVC DLA-X7は15.1kgあります。MITSUBISHI LVP-HC4000はX7に比べかなり軽く、3.6kgです。寸法と併せて、重量もきちんと計算に入れておくべきでしょう。またプロジェクターを天井から吊り下げる(天吊り)となると、天井の強度が十分かが問題になります。ホームシアターのインストーラーに依頼しない場合、特に注意が必要です。
参考例:
MITSUBISHI LVP-HC4000 3.6kg
JVC DLA-X7 15.1kg

・端子
プロジェクターの端子には「映像入力」と「コントロール/制御」の端子があります。映像入力に関しては、今回とりあげている4メーカー/16製品については特に気にする必要はないでしょう。いくつかのモデルで、PCアナログ(D-sub15pin)やS端子のないものがありますが、基本的にHDMIがあるのでOKです。ホームオートメーションや統合リモコンなど、制御規格についてはどれもRS-232Cが搭載されています。また電源ON/OFF時に電動スクリーンを連動させるトリガー端子も搭載されています。
参考例:
EPSON EH-R4000の接続端子の様子

r4000-interface.jpg

・インターフェイスパネル
端子が揃うインターフェイスパネルの場所も把握しておきましょう。例えばJVC製品では、これまでのHDシリーズでは側面にあったパネルが、新しいXシリーズでは後方に変更されています。ケーブル類の長さがギリギリだと、本体を回りこんでの取り回しができなかったりする場合があります。意外に忘れがちなので、覚えておいてください。
参考例:
MITSUBISHI LVP-HC3800は背面にパネルを設計

hc3800-interface.png

・排熱ファン
棚の中に収納して設置する場合は、排熱ファンの位置に気を使う必要があります。冷蔵庫と同じで、間近に障害物があると十分な排熱を行うことができません。故障の原因ともなります。また自分の近くに置いて視聴する場合、意外に熱気が伝わってきます。特に夏場はやっかいです。排熱ファンの位置、プロジェクターの設置位置、視聴位置の3つをあらかじめ考えておきましょう。
参考例:
JVC DLA-X3の外観前面。位置だけでなく、排気の風向や強さも確かめたい。

dla-x3-w_spec.jpg

・騒音
ホームシアター用のプロジェクターは、騒音に配慮して設計されているので、あまり神経質になる必要はありません。だいたいどのメーカーも20db程度に抑えられています。ただし、「なんとかモード時」みたいな併記があるので、そういう製品はメモしておいて、実際に販売店で試聴する時に確認することを忘れないようにします。ちなみにMITSUBISHIの製品は騒音についての記述が見当たりませんでした。一応、取扱説明書のPDFもダウンロードして検索をかけたのですが、記述自体がないようです。
参考例:
EPSON EH-TW3600の場合、エコモード時22dBとのこと。

・ズームレンズ
スクリーンに映る映像のピントを合わせる時に、レンズを調整します。ピントなどの調整を手動で行うタイプと、リモコン操作によって自動で調整ができるタイプがあります。前者の手動タイプには、EPSON TW3600/4500とMITSUBISHI HC4000/3800があります。この他、レンズプロテクターが自動開閉式のものと、キャップ状の手動式のものという違いも各製品にあります。こうした項目も、地味ですが、長く付き合っていくうえで考慮したい項目です。
参考例:
EPSON EH-TW3600はレンズキャップを手動で開閉する仕様

tw3600.png
(画像は取扱説明書PDFより)

・投写サイズ
投写サイズ、つまりスクリーンのサイズについては、JVCとSONYは200インチまでの記載があります。EPSONとMITSUBISHIは300インチまでの記載があります。例えば屋外でのイベントなど、300インチに相当する大型スクリーンに投写する場合は後者になります。ただし、投写距離によって投写できるサイズの大小に限界があることを覚えておくべきです。

・投写距離
最後に投写距離です。投写距離は特に重要です。部屋が広い分にはあまり不自由しませんが、空間に余裕のないかたは、気をつけてください。一般に投写距離が短いと大きな画面が得られません。MITSUBISHI HC4000のように、最短投写距離をうりにした商品も中にはあります。画質や機能だけでなく、こうした投写距離の使いやすさも非常に重要なポイントです。
参考例:
各メーカーのサイトには、投写サイズ/距離が簡単に比較できるページが用意されています。

JVC | DLA-X9/X7/X3/HD950/HD550共通
SONY | 機種別
EPSON | 全機種対応(サイト左中央付近「投映距離シミュレーター」)
MITSUBISHI | 各機種の情報ページより(リンクはHC4000)


下調べ:「機能」を知る
プロジェクターの機能には、各メーカーの持つものと、製品が個別で持つものに分けられます。機能の詳しい解説や技術的なことは専門サイトに譲り、ここではその機能がどのように役立つのかを整理してみます。以下で紹介するもの以外にも、様々な機能がありますし、インターネット上だけでもかなり多くの情報が得られます。色々と調べてみてはいかがでしょうか。

・画質調整
各メーカーで調整項目や方式が異なるため、詳しい説明は各社のWebサイトでご確認ください。理解するポイントとしては、画質調整といってもプリセットされた「設定」を選べるのか、それとも細かい任意の数値を選べる「調整」ができるかです。大事なので繰り返しますが、「設定」と「調整」は違います。設定とは、あらかじめメーカーが用意している数値の組み合わせを選ぶことです。調整とは、メーカーの意図に関係なく、ユーザーが好む画質を表現することです。微妙な違いですが、この「できる・できない」で価格も変わってくるので、選ぶうえでの一つのポイントです。

・倍速駆動
倍速駆動は、映像のブレを軽減する技術です。JVCでは「クリアモーションドライブ」、SONYでは「モーションエンハンサー」と呼ばれているものです。スポーツの映像など、一瞬の早い動きはどうしてもブレた映像になります。電車や車に乗っている時に、視線を変えないで外の景色を見ると、横にブレて何がなんだかわかりませんよね。ただしこのモードを効かせ過ぎると、映像自体に違和感がでます。通常は切っておけば良いので、あって迷惑な機能ではありません。

・アイリス機構
カメラの絞りに相当する機構です。前回の記事でもとりあげましたが、JVCのように「ネイティブコントラスト比」でない製品は、だいたいこのアイリス(絞り)を使って高いコントラスト比を実現しています。少し乱暴な説明ですが、アイリスを絞ると、光量が減り、暗いシーンでは有利に黒を再現できます。明るいシーンでは逆にアイリスを開放することになります。おわかりだと思いますが、暗いシーンと明るいシーンが同時にある場合は、仕様表の通りのコントラスト比は再現できないことになります。メーカーでは、こうした暗い/明るいのシーンを識別して、アイリスの絞りを自動調整しています。

・レンズシフト
プロジェクターは通常スクリーンに対して、縦/横にずれた場所に設置されます。そのずれた分をレンズシフトにより、補正します。従って、このレンズシフト機能の対応範囲が広ければ、それだけ柔軟に設置場所を選べることになります。例えばEPSONのTW3600では、上下96%、左右47%の補正機能を持っています。こうした機能により、部屋の間取り上の制約がかなり緩和されます。スクリーンの正面に場所がとれないと諦めていた人も、レンズシフトに長けた製品を探して、是非もう一度検討してみてください。

・3D対応
現在のところ、一般に発売されるホームユース製品では、JVC DLA-X3/X7(プレミアムモデルのX9も)、SONY VPL-VW90ESの3機種が3Dに対応しています。JVCは3D専用メガネと、3Dを観るのに必要なシンクロエミッターは付属していません。SONYは製品に付属しています。3Dに関しては、性能や画質の評価に賛否両論がありますが、この記事は入門的な購入の手引きを目指しているので、画質への言及は控えておきます。また画質や性能については別に記事を書きたいと思います。


下調べ:「クチコミ」で知る
インターネットを使った情報収集では、やはりクチコミが大きな力を発揮します。これはインターネットだから出来ることです。もちろん知人やメディアでのクチコミも従来からありますが、情報の集積性と量で圧倒しています。インターネット上のクチコミは、その情報が信頼できるものであるかの判断が必要です。情報の発信に責任を負うテレビなどのメディアでは、こうした情報の信用度を判断するという行為が省略できました。慣れていない人は、そうした習慣のままネットの情報に接してしまい、失敗することがあります。あくまで下調べでのクチコミということを忘れなければ、問題なしです。

ネット上でクチコミ情報を得る方法は色々とありますが、以下に代表的なものを挙げておきます。

・情報サイト
価格.com
AV Watch
Phile-web
ITmedia +D LifeStyle

情報更新/発信の頻度が高いものを挙げています。特に下3つのサイトはRSS登録をして常に最新の情報を入手できるようにします。

・掲示板サイト
AV機器・ホームシアター@2ch掲示板
Phile-webコミュニティ

2chは情報に責任を負う必要がなく、その分普通では知ることができないコアな情報に接する機会があります。Phile-webコミュニティは、エンドユーザーの声が直に聞こえてきます。

・販売店/インストーラー
AV機器ショップ(リアルショップ) | Phile-web

セールス色が強いため参考値にはなりにくいものの、たまに製品の解説をしています。

・個人のブログ
HAL

AV機器専門にやっていて、かつ信ぴょう性のあるプログが一つしか挙げられませんでした。オーディオも含めればもう少しご紹介したいサイトもあります。

・その他
ホームシアターサウンド(日本オーディオ協会)
CEDIA Asia Pacific

正直なにをしてるのか謎の団体なのですが、ご紹介しておきます。



こうしたWebサイト以外に、当然Googleのネット検索を使い、調べたい単語を決め打ちして情報を収集できます。ちなみに日本のYahoo!はまもなく検索アルゴリズムがGoogleに変更されるのと、視野に入る広告面積が大きく、また検索結果の表示が外観的に秀逸ではありません。長時間の検索にはやはりGoogleがお薦めです。


まとめ
ホームシアターのプロジェクターは、やはりデータプロジェクターやディスプレイ製品に比べて高価です。その分、購入には十分な理解と比較が必要です。

オーディオ/ビジュアル機器を選ぶときに大切なのは、自分の目と耳を信じることだと思います。自分の目と耳を信じるということは、それまで自分が歩んできた、体験してきた歴史を信じることでもあると思います。情報に接する量が増えれば増えるほど、自信が崩れそうになりますが(私もそうです)、結局それを買うのは他人の為ではなく自分の為です。自分の目と耳、それから教養と興味、それらが満たされるものを選ぶようにしたいと常々思っています。

まずはご自宅で可能な範囲の調査を行い、自分なりのデータを持って販売店やインストーラーへ行ってみてはいかがでしょうか。この記事が、その一助になれば幸いです。
written by Kyo_Yamada
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2010年11月12日

2010年 国産主力プロジェクターの比較

国産4メーカーのプロジェクター比較
2010年11月現在で発売/発表されているプロジェクターを、国産の主力4社で比較します。

前回の記事では、Victor/JVCのDLA-X7/3についての質問を紹介しました。回答からもJVC製品の優位性が語られていますが、他社との性能差は実際どうなのでしょう。私たち日本のユーザーは、プロジェクターだけでも多くの国産メーカーを選ぶことができます。どの製品を買えば良いか迷いますが、まずは単純な比較から始めてはいかがでしょうか。

今回は国産メーカーから、さらに主力4社に絞った比較をしています。プロジェクターを初めて選ぶ人が、どこを見て比べれば良いのかをできるだけわかり易くまとめました。

プロジェクター主力4社の比較表

※メーカー名をクリックすると製品ページへアクセスできます

JVC DLA-シリーズ
製品名称種別価格タイプコントラスト比輝度
X7 New 新世代¥840,000 反射型液晶 70,000:1 1300lm
X3 New 新世代 オープン価格 反射型液晶 50,000:1 1300lm
HD950 旧世代 ¥528,000 反射型液晶 50,000:1 900lm
HD550 旧世代 ¥318,000 反射型液晶 30,000:1 1000lm
SONY VPL-シリーズ
製品名称種別価格タイプコントラスト比輝度
VW90ES New 新世代 ¥603,999 反射型液晶 150,000:1 1000lm
HW20 New 新世代 ¥248,631 反射型液晶 80,000:1 1300lm
VW85 旧世代 ¥390,000 反射型液晶 120,000:1 800lm
HW15 旧世代 ¥242,300 反射型液晶 60,000:1 1000lm
EPSON EH-シリーズ
製品名称種別価格タイプコントラスト比輝度
TW3600 New 3LCD ¥225,965 透過型液晶 50,000:1 2000lm
TW4500 3LCD ¥272,790 透過型液晶 200,000:1 1600lm
R4000 New Reflective ¥590,520 反射型液晶 1,000,000:1 1200lm
R1000 New Reflective ¥454,170 反射型液晶 500,000:1 1200lm
MITSUBISHI LVP-シリーズ
製品名称種別価格タイプコントラスト比輝度
HC7000 3LCD ¥277,200 透過型液晶 70,000:1 750lm
HC6800 3LCD ¥177,500 透過型液晶 20,000:1 1300lm
HC4000 New DLP ¥186,900 DLP 3,300:1 1200lm
HC3800 DLP ¥148,919 DLP 3,000:1 1200lm

*2010年11月12日筆者作成
*価格.comの最安値を参照(この価格での購入保証をするものではありません)
*表中の値は公式Webサイトより参照

上記の4メーカーの他にも、三洋電機Panasonicシャープの製品も市場にはあるようです。また海外メーカーもありますが、紹介は別の機会にします。今回ご紹介する4社のうち、弊社で取扱のある、お客様へ販売可能なメーカーはJVCのみです。SONY・EPSON・MITSUBISHI社製品については、フェアな製品比較ができず、画質の良し悪しといった「評価」についての言及ができないことをご了承ください。

※以下のインストーラーではJVC社以外の製品も試聴できます。

CAVIN大阪屋(北海道)
アバック(首都圏)
EMC設計(愛知)
ホームシアター工房(大阪)
SOUND TEC(山口)
映音システム(福岡)


4社の概要
以下では、4社の市場内でのポジションを解説します。

JVC DLA-シリーズ
先日発表された新製品X7とX3は共に3D対応。ラインナップは従来より上位・下位の2機種を用意し、モデルチェンジは同じタイミングで行う。価格はミドル〜ハイクラスを維持。高精細な画質を実現できる反射型液晶方式を採用。コントラスト比の仕様表記は、従来より一貫して「ネイティブコントラスト比」を採用(後述)。輝度は前世代の上位機HD950で900lm、HD550は1000lm。海外も含めホームユースではトップレベルであり、「本格的なホームシアターならJVC」という文脈で言われることが多い。

SONY VPL-シリーズ
最新機種のVW90ESは3D対応。ラインナップはJVCと同様に上位・下位2機種を用意してモデルチェンジ。反射型液晶方式を採用し、JVCと共に国内ハイエンド機の双璧であり、その確たる性能をJVCよりやや安価に買える。コントラスト比の仕様表記は、機構的な補正をかけた状態での最大値を採用(後述)。輝度もおおよそJVC製品と同様。間違いなくハイエンド機種で、なおかつJVCより安価に買える可能性が高い。もしあなたがJVCとSONYの最高機を並べてみてようやく微小な違いがわかる、というなら、SONY製品でも十分幸せになれるし、映画も最高に綺麗に観られる。

EPSON EH-シリーズ
9月に反射型液晶方式の2モデルを発表。従来の透過型液晶方式「TW」に加え「R」をラインナップし、JVC・SONYに加えて反射型液晶プロジェクターのメーカーとなった。これまでは透過型液晶方式でコストを抑えた製品が中心であった。コントラスト比は機構的な補正ありでの最大値。これまで一貫して液晶デバイスを自社製造して透過型液晶方式を採用していたが、その構造上、精細感・コントラストに限界があったのかもしれない。それでも技術の向上により、従来に比べ高コントラスト・高輝度で低価格を実現し、プロジェクター市場に大変な貢献をした。

MITSUBISHI LVP-シリーズ
8月にDLP方式のHC4000を発売。このDLP方式と透過型液晶方式の2ラインナップ。価格は総じてリーズナブルで、映画を大きい画面に映す楽しみを手軽に実現できる。DLP方式で3000:1のネイティブコントラスト比を実現。輝度はHC7000がやや暗いが、他は1000lmを超えている。新製品のHC4000は80インチのスクリーンに2.4mの距離から投写できる。日本の住環境からも、こうした短距離で投写可能な機種は貴重。またDLP方式も今後さらに性能がよくなる可能性がある。

用語の解説
次に各社の製品を見比べながら、用語を解説したいと思います。
製品を見比べる時には、用語をきちんとわかっていることが大切です。以下であげた用語は、最低限理解しておくべきです。実際に仕様を読めるようになれば、さらにその製品への理解が深まります。

・反射型液晶方式と透過型液晶方式
製品名称メーカー価格タイプコントラスト比輝度
X7 New JVC¥840,000 反射型液晶 70,000:1 1300lm
VW90ES New SONY ¥603,999 反射型液晶 150,000:1 1000lm
TW3600 New EPSON ¥225,965 透過型液晶 50,000:1 2000lm
HC7000 MITSUBISHI ¥277,200 透過型液晶 70,000:1 750lm
覚えておくべきは、「反射型 > 透過型」という図式です。精細感・コントラスト比・価格において、反射型が透過型を上回ります。また従来から「反射型=JVC・SONY」「透過型=EPSON・MITSUBISHI」というすみ分けがあり、「EPSONが反射型に参入した」ことが話題になったのには、そういった背景があるからです。この二つの方式に、DLP方式が加わります。


・価格ゾーン
製品名称メーカー価格タイプコントラスト比輝度
X7 New JVC ¥840,000 反射型液晶 70,000:1 1300lm
VW90ES New SONY ¥603,999 反射型液晶 150,000:1 1000lm
TW3600 New EPSON ¥225,965 透過型液晶 50,000:1 2000lm
HC4000 New MITSUBISHI ¥186,900 DLP 3,300:1 1200lm
こちらは用語というわけではありませんが、プロジェクターを選ぶ時に役立つ知識です。業務用プロジェクターや4Kプロジェクターを除外したホームユース製品では、ざっくりと上記表のようにみることができます。価格がさらに安価な、10万円を切るプロジェクターは一般的に「データプロジェクター」とカテゴリされる場合が多く、ホームシネマ用ではありません。また予算面でお悩みであれば、「どこにお金がかかっているのか?」と考えるようにすべきで、余計な機能やオーバースペックな機器に手をだすことを防げます。


・コントラスト比
製品名称メーカー価格タイプコントラスト比輝度
X3 New JVC オープン価格 反射型液晶 50,000:1 1300lm
HW20 New SONY ¥248,631 反射型液晶 80,000:1 1300lm
R1000 New EPSON ¥454,170 反射型液晶 500,000:1 1200lm
HC7000 MITSUBISHI ¥277,200 透過型液晶 70,000:1 750lm
コントラスト比はプロジェクターの性能をみる上で特に重要ですので、少し詳しく説明します。「コントラスト」とは、明るい部分と暗い部分の差です。製品の表にある「コントラスト比」とは、一番明るいところから一番暗いところまで、何段階で投写することができるかを表しています。この段階が多いほうが性能が良いことは、おわかりだと思います。


sample-12.gifsample-x.gif


左の画像は、明暗を12段階に調整しています。従って、白と黒の間には、グレーが10段階あります。右の画像は、データを調整していませんから、お客様が使っているディスプレイの性能の範囲で、グラデーションが表示されているはずです。単純に言うと、これが映像機器の性能の差です。お客様がお使いの機器によって、見え方が変わってきます。プロジェクターにも同様のことが言えます。ですから、よりなめらかにグラデーションを見えるようにするには、コントラスト比が高いディスプレイ/プロジェクターを買おうということになります。

ではコントラスト比の仕様を見ようということになりますが、厄介なことに各メーカーでコントラスト比の表記方法が統一されていません。例えばJVCは「ネイティブコントラスト」、SONYは「ダイナミックコントラスト」をそれぞれ表記しています。ネイティブコントラストとは、簡単に言うと「一度に映像機器が表現できる能力」を測っています。ダイナミックコントラストは、アイリスという機構を使って有利に暗くしたところと、有利に明るくしたところを測って、その幅を表記しています。そのため、一概にコントラスト比の数字が大きいものを買えば良いということではありません。

弊社はJVC製品しか売っていないので、「実はネイティブコントラストが重要なんですよ」と言うとフェアじゃないのですが、実際にオーディオ・ビジュアル評論家の麻倉怜士さんも著書の中で以下のように言っています。


 ここで注意すべきは、カタログに記載されているコントラスト比は必ずしも当てにならないということです。
 コントラスト比にはさまざまな測定方法があり、メーカーごとに考え方が異なります。例えばビクターのLCoS方式のプロジェクターでは、アイリス(絞り)を固定した状態で、同一画面上のもっとも明るい箇所と暗い箇所を比べた数値をカタログに記載しています。私に言わせれば、一番正直かつまっとうな手法で測定している。このように、素の実力が分かるコントラスト比のことを「ネイティブコントラスト」と言います。

『◎作法二十四 ーカタログに記載されたコントラスト比は信用しない』より
「ホームシアターの作法 」(ソフトバンク新書)


・輝度
製品名称メーカー価格タイプコントラスト比輝度
X7 New JVC¥840,000 反射型液晶 70,000:1 1300lm
VW90ES New SONY ¥603,999 反射型液晶 150,000:1 1000lm
TW3600 New EPSON ¥225,965 透過型液晶 50,000:1 2000lm
HC7000 MITSUBISHI ¥277,200 透過型液晶 70,000:1 750lm
輝度は明るさのことです。この数字が大きいほど、画面が明るく映ります。単位は「lm=ルーメン」が使われます。お客様がプロジェクターを選ぶ時に気をつけるべきは、プロジェクターを設置する環境です。リビングなど、外部の光が侵入しやすい場所では、輝度の高い製品を選ぶべきでしょう。当たり前ですが、周りが明るいと、それを上回る明るさで画面を映す必要があります。また3Dでは専用のメガネをかけるため、より画面の明るさが求められます。明るさはプロジェクターに搭載されたランプの性能ですから、コストになります。ですから、特に周りが明るくないのであれば、輝度が高い製品より、コントラスト比などにコスト配分された機器を買うのが賢い選択と言えます。

まとめ
プロジェクターを選ぶときに見なければならない、基本的な項目を見てきました。プロジェクターに限らずなんでもそうですが、数字で全ては判断できません・・と、よく言われますが、逆に数字でしか判断できないこともあります。例えばコントラスト比は映像を見ただけでは絶対にわかりませんよね。こうした仕様は、数字で事前に確認し、そのデータを踏まえて実際に試聴して確認するのがベストです。日本には幸いにも優れたメーカーが多数あります。製品の性能とコスト配分をよく観察し、実際にお店でご覧になられて決めるのが良いでしょう。

実際に製品を試聴するときに、どういったところを見れば良いか?次回はもう少しソフト面、例えば映像の調整機能や色の出具合の差などを紹介したいと思います。数字だけの単純な比較ではわからない、ソフト面でのコスト配分というのが見えてくるのではないでしょうか。

written by Kyo_Yamada
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2010年11月06日

Victor/JVC DLA-X7/X3に関する15の質問

JVC DLA-X7/X3に関する15の質問
11月5日に難波御堂筋ビルディングにて行われた、日本ビクター主催のプロジェクター新商品内覧会へ参加してきました。

この内覧会では、これまでのDLA-HD950/550から、新たに3D対応となったDLA-X7/X3を試聴することができました。構成は、試聴から質疑応答まで含めて約1時間。ざっとパワーポイントでカタログ記載と同様の製品紹介。その後、機能の実演と試聴がありました。最後にJVCロゴの専用メガネが配布され、3D作品も試聴しました。

予想した通り内覧会の構成と内容は、Webサイトもしくはカタログを見ればわかるような説明と簡単な比較試聴にでした。時期が来れば量販店での展示など、ほとんどのエンドユーザーもこの内覧会で見聞き知れることが体験可能だと思います。唯一、エンドユーザーにとって困難なことは、表に滅多に出てこない開発者へ率直に質問をぶつけることです。昨日は、これが可能な絶好の機会でした。以下に質問と回答をまとめます。

※質問・回答は要約されていますが、両者の発言意図は変えていません。インタビューは録音されており、筆者の記憶に頼ったものではありません。


何と比べて"フィルムライク"なのか
何と比べてというわけではない。ホームシアターを楽しむというのは、ミニ映画館だと思っている。最近はデジタルシネマが映画館でも増えているが、やはり"フィルムの質感"を再現したいと考えている。昔のフィルムというのは、たとえ映画館であっても、今とは違ってコントラストがないようなプロジェクターで上映されていた。でも独特の質感があった。現在でも三管プロジェクターが求められているように、こうした"映画館の質感”は単なる性能だけの問題ではないし、"感性"とかそういうところだと思う。こうした微妙なディティールを、なんとか家庭用でも再現できないかと、ずっと取り組んでいる。


ディスプレイと比べて、より"フィルムライクにできる"と考えてよいのか
パネルはあくまでも「直視」。人間の目が光を直視することは通常ない。必ず光が反射したものを見ている。例えば今我々がお互いを見ているのも反射した光を見ている。従って、直視する場面はテレビぐらい。映画館もスクリーンからの反射。プロジェクターとディスプレイでは、その辺りでニュアンスの違いがある。


X7は鮮やかすぎるように感じたが、これもJVCが考える"映画館の質感"なのか
鮮やかだと感じたのはHD950に比べて"明るかった"ということも一つだと思う。X7はHD950に比べて400ルーメン上がっている。正直言って家庭ではまぶしいと思うが、これは3Dに対応するために明るくした結果だ。今回の展示機(X7/HD950)は工場出荷時の状態であり、家庭では「アパーチャー機能」で絞ることもできると思う。もう少し輝度を下げることで、鮮やかさも和らぐのではないか。


具体的になにをすることで"フィルムライク"を実現しているのか
言えないところもあるが、今回はフィルムを徹底的に解析した。コダック富士フィルムの2社、もちろんその中でも種類はあるのだが、このフィルムを専門機関に依頼して何千枚と色データを焼いてもらった。その色データを受けて、では光がフィルムを通過した時どう見えるか、というのを解析した。例えばこうした色だったら、じゃあ実際はこのように見えると。こうした作業で色をつくっているところで、"フィルムの質感"と我々は言っている。


開発段階ではBlu-rayソフトなどは使わないのか
「画づくり」のところでは使う。あくまで色づくりでは、ランプがフィルムを透過した色を一点一点解析している。それが今回の「フィルムモード」。映画館に近いものを持っていると考えている。事実これはフィルムなどの専門機関で見てもらい、お墨付きを得ている。もちろんフィルムと全く一緒というわけではないが、家庭での再現ではかなり近い質感だと言われた。


ソフト面での改善はわかったが、ハード面ではどうか
光学エンジンなども含め、かなりある。特にLSIがキモではないか。実はHD950ではカラーマネージメントなどを既製品のLSIで処理していたが、今回のX7はJVCのオリジナルをつくった。だから、もちろんソフト面でのフィルム解析などもあるが、それを処理できるLSIを搭載したというところがある。


ユーザーが使わないと画質調整機能は意味ないと思うが、それらを啓蒙する取り組みはあるのか
日本ではほとんどない。国内モデルだとモードを選ぶだけだが、実は海外モデルだとTHXISFキャリブレーションができる。海外ではキャリブレーションを行う文化がある。メーカーが設定した画よりも、自分で調整したりインストーラーなど専門家に依頼する場合が多い。従って、我々もそちらへ主眼を置いている。日本では予めプリセットされた設定を選んでもらうことを前提としている。前提が違う。もちろん自分で調整をされるユーザーもいるが、難しい調整なしに、例えば「フィルムトーン(X7のみ)」で比較的簡単に設定をできるようにしている。X7はX3に比べ多彩なプリセットが選べる。そしてキャリブレーションが可能というところが、X7を選ぶバリューであると言える。


2,3年前に比べて進歩しているところは何か
実は「フィルムモード」は研究所の者が3年前に既に考えていた。これはDLA-HD100の時のこと、しかしHD750/350の世代で実現できなかった。発想はあったが、LSIが追いついていなかった。解析するにも時間がなかった。フィルムの解析は大変な作業だ。それが正直なところの事実。翻って見れば、この辺りは現在DLA-HD1やHD100を使っているユーザーにも訴求できる点ではあると思う。


LANポートがついているが、どういった使用を想定しているのか
LANはあくまでRS-232Cの代わり。日本では赤外線(IR)を使ったプログラムが多いが、海外ではやはりLAN。将来的にはもっと活用していきたい考えだが、もう少し時間がかかると思う。


Apple製品を端末にしたコントロールなど、操作系統にイノベーションは起こらないのか
一気にはできないが、そういう方向にしていきたい。


3D対応が控えめだが、ディスプレイに比べてまだ3Dは難しいというメッセージなのか
そうではない。まず2Dの基本画質がもっと良くならないと3Dは楽しめないということ。去年のモデルでそのままやっても、例えば明るさが足りなかったり、メガネをかけた時に色が変わってしまう。そういった基本画質のところで、調整できる機能がないといけない。ブームだから良いが、3Dはどうなんだろうとせっかく観た時にがっかりして欲しくない。3Dを一過性のものにしたくない。


3Dの優先度が低いように感じるが、消費者はどうのように解釈すればよいか
ディスプレイよりはプロジェクターのほうが3Dに向いていると思う。またそれをもっとプッシュしていきたい。ただリリースされている周辺機器やソフトもまだ充実していない。これからだと思う。JVCの製品づくりは、どちらかと言えば映画館からおりてくる感じだと思う。映画館での3Dはかなりメジャーになってきているし、設備も整ってもきている。映画館で3Dを観て、それを家でも楽しみたいという人たちに、3Dを用意したい。だから我々は他社と違い、両方とも3D対応にしている。どちらを買っておいても、観たいと思った時に観られる。


製造についてはどうか
外装やアッセンブリーは中国。エンジンなどは日本で製造し、あちらへ送っている。


価格面での声もあるが、機能を削いでCPを上げる発想はないのか
プロジェクター市場でJVCに対するある程度のブランドやクオリティのイメージがあると思う。やっぱりJVCの商品は「画が良い」「黒が沈む」と言って頂ける。だから中途半端にしたくない。中途半端な商品にしないとなると、やはりお金をかけなければならない。コストパフォーマンスの点では、3D対応という機能を付けてJVCのクオリティを最低限確保できている。それで50万円を切る。CPは高いんじゃないかと思う。


今後も消費者はJVCは高級機を用意してくれると考えてよいか
はい。それしかつくれないですから(笑)




written by Kyo_Yamada
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2010年11月04日

B&W 800Diamond | 澤田龍一氏による解説 part.4

澤田龍一氏による解説 part.4
弊社で行われたB&W 800Diamond試聴会を公開いたします。(全4回)
D&Mホールディングス/マランツ・ブランド・音質担当マネージャーの澤田龍一氏を講師に招いた、B&W 800Diamondの詳細な解説です。試聴会の実際の映像と、氏の発言を読みやすく編集した文字の両方でお届けいたします。日本国内でもまだ出荷数・展示数ともに少ない本機について、少しでも知っていただける機会になれば幸いです。




動画の音声を聴きながら、文面を追ってご覧ください。

コーン紙からも音は漏れている




なかなかうまく作ってますね。サウンドデザインをするのに、やっぱりその、空間の表現というのがよくわかっていると、こういうものができるんです。みなさん今のレコーディングスタジオに行かれると、70chとかの調整卓のデカいのがあって、正面の壁にラージモニターというバカでかいスピーカーが埋め込んであるんですが、今はラージなんか全然使うことないです。調整卓の上に乗っかってるちっちゃいスピーカーで、ほとんどやっちゃうんです。最近は多チャンネルで最初っから録っちゃうことが多いので、こういうトールボーイのスピーカーを、5本最初から入れているところが多くなってきています。こういう横幅の広くないスピーカーは音の回り込みがスムーズなんです。こういう空間表現をさせるには結構良いんじゃないでしょうか。

以上、ミッドレンジまでご説明したんですが、次にウーファーの方をお話しします。まずウーファーのコーン、今私が手に持っているのは、800の一つ下の802のウーハーのコーンです。ボイスコイルの直径がだいぶ違いますけど。こっち(800のボイスコイル)は3インチ/76mm、これ(802のボイスコイル)は36mmかな。それでこのコーンなんですが、これはロームっていうドイツの会社の、「ロハセル」とか「ローセル」とか呼んでいるんですけど、そういう材料を使ってます。高分子の材料の発泡体、まあなんというかポン煎餅みたいなものです。柔らかいんですよ結構。これは曲面成形もできます。その前と後ろの表面にカーボンファイバークロスを貼りつけたものですね。このローセルっていう芯材のところはそんなに強度がないんですけど、表裏にクロスを貼り付けるとやたらに強くなるんです。軽くて非常に強い。これは何に使われているかっていうと、今の新しい新幹線のボディ、流線型になってますね。あのボディとか、他にはミサイルやスペースシャトルの先端のノーズの部分。ああいうところに使われているんです。軽くて強度もあって熱にも結構強い。こんなに厚いんですよ。コーンの厚さが1cmぐらいある。これがミソなんですけどね。こういう物をコーンの材料に使っています。面としての強度はすごくあるんですが、一点をギュッとやると凹んじゃいますけどね。

なんでそんな物を使ったのかというのは、実は遮音のためなんですよ。防音室の扉と同じ。キャビネットの中の音がコーンを透かして表に出ないようにそれで厚くしてる。遮音のためなんですね。そういう役割を果たさせています。箱の中ってモゴモゴもごもご妙な音がいっぱい充満してるんですね。それは、スピーカーの教科書では、ここにユニットが蓋をしているから外には洩れないことになってるんですけど、例えば多くのフルレンジスピーカーなどは、厚さが1mmぐらいしかない紙のコーンを使ってますね。しかし障子紙の向こうでしゃべってる声は聴こえますから、それと同じで、キャビネットの中の音はコーンを通過して聴こえちゃうんです。それが本来のユニットから出てくる音に混ざって、混濁を起こすのはよろしくないというんで、コーンを遮音型にしちゃった。それがこのコーンを使った理由です。強度だけだったらこんな厚さは要らないんです。このローセルっていう材料を最初にコーンに使ったのは、フォーカルですね。JMラボの。ただね、彼らは軽くて強度があって損失が大きい、ということで採用したんだけれども、遮音という概念は彼らになかった。だから3mmぐらいの厚さでした。それに対してB&Wのはやたらに厚くて、いわゆる箱の中の音を通さない。だいたい20dBぐらい減衰させます。そういうようなことをやってるわけですね。

さて、もう一つ。今度はライブをおかけします。そこにもDVDがありますけど、女性ボーカルのサラ・K、それからクリスジョーンズ男性ですね。この二人のライブを聴いていただきたいと思います。レーベルはドイツのストックフィッシュ・レコードです。これもハイエンド・オーディオマニア向けのレーベルですね。いろんなものを出していますが、こういうシンプルな、ギターとボーカルとかね、そういうものが多いです。これも割り合い素直な録音で、あんまりややこしいイメージにはしてないですね。モニタースピーカーは、初代のノーティラス801です。

(再生 略)
低域をいかにコントロールするか




さて、実際のウーファーユニットがこれなんですけど。これが実物です。この外側に見えているのは、これ実はユニットを押さえ込んでいるフランジで、フレームではないんです。これを外すと、中からユニットが出てきます。これ本物の800Diamondのウーファーです。先程ご説明したとおりコーンはこの幅が、幅っていうんですか厚さが1cm近くあるんです。

磁気回路は見慣れない格好の磁気回路になってまして。今回の800Diamondの一世代前の800Dのウーファーがこっちですね。これはいわゆる一般的なフェライトマグネットを使った磁気回路です。大変重くて15kgぐらいありますか。こんなにデカいんです。マグネットの直径が22cmちょっとあったと思います。これは、まあ要するに一般的なフェライトマグネットですよ。バカでかいね。実はこの800番には、25cmのウーファーがダブルで入っているんですが、最初のノーティラス800シリーズの時には、800って番号の製品はなかったんです。一番トップは801だったんです。38cmのウーファーが一発で、ミッドとツィーターが同じような構成ですね。B&Wは本物のスタジオモニターとしての801を導入したんですが、なかなかその大口径ウーファーを持った801を、スタジオユースならいいんですけど、一般の部屋に持ち込もうとすると低域の処理が非常に難しい。スタジオでは、50cmぐらい持ち上げてますからね。コンソールから頭が出るように、こんな高さに置いてますから、床の反射が一般の状況と全然違うんです。ですから、耳の高さに合った低いところに置くと、結構床からの反射が出てきてやっかいだというんで、800番をつくったんですね。

その時に、そのノーティラス801の38cmウーファーの磁気回路をそのまんま使って25cmウーファーをつくっちゃった。新しい磁気回路を起こさないで流用したんです。ですからこの磁気回路、これ実は38cm用の磁気回路なんです。そのままなんです。ボイスコイル径も、100mm、10cmあります。新しい磁気回路つくらないで流用してフレームを小さくしただけで25cmのウーファーをつくっちゃった。でまあ、こんな直径の小さなコーンを、こんなにバカでかい磁気回路で強引に押さえ込んで、801でコントロールの難しかった低域を、とにかく電磁制動かけちまおうと、まあそういう考え方だったんですね。

それに対して今度のやつは、妙な格好をしてますけど、フェライトではなくてネオジムです。で、それが磁気回路に二つ入っています。先程ご覧になったフェライトの磁気回路が、背中合わせに二つくっついているような構造になってまして、要は、コーンが出たり入ったりする時に、磁気回路がプッシュとプルで二つ背中合わせに入ってますから、「出」と「入」が同じ力なんですよね。それに対して一般的な磁気回路は、「出」と「入」が同じじゃないんですよ。出る時と入る時の駆動力が完全には同じではないんです。スピーカーっていうのは常にこういう風に動くわけですから、「出」と「入」が完全に対称になるように磁気回路を組んだのが今回のユニットですね。まあ構造としてはそういうものです。

それでもって、サスペンションをね、このダンパーですね。これが、どちらもダブルダンパーで、この幅で二枚上下に貼ってあるんですが、そのダブルダンパーの設定がまるっきり違ってまして、数字にすると、エフゼロにするとそんなに違わないんですけど、(800Dのものは)すごくサスペンションが硬いんです。それに対してこれ(800Diamond)はもう、ほとんど、なんて言うんですか、機械的な抵抗がない、そういうような非常に初動感度の良い、柔らかいサスペンションです。この800の下に802っていうモデルがあるんですけど。そのウーハーのボイスコイルがこれなんですよ。これが旧型の802、これが今の新型の802。ボイスコイルの径も違います、巻幅も違います。でまあ、ボビンも長いんで、ボビンの強度も、こっちはまあカプトンですからこんな感じですけど、非常に強いものに変わっています。一番違うのはダンパーの設定で、非常に柔らかでしなやかなものになっています。使ってある繊維が細いんです。旧型はかなり太い繊維で、どっちかって言うと安定度重視設計。こっちは非常に初動感度の良いものに変わっています。

さてウーファーですから、少し低い周波数を入れてみたいんですが、今度はCDで、これは北欧の、ノルウェーだったかな。教会の中、パイプオルガンをバックにして、ソプラノ・アリアが真ん中にあります。女性がそこで歌っているソプラノ・アリアと、パイプオルガンっていうのは建物ごとの楽器ですからね。まあそのスケール感の対比ですね。それを聴いていただきたいと思います。

(再生 略)
弊社よりご挨拶




というようなことで、始まりがちょっと遅かったんで、少し時間が遅れましたけど、一通り内容をご紹介させていただきました。せっかくお集まりいただいたので、ご挨拶をして頂いて・・。

<弊社>
今日はどうも長時間ご参加いただきましてありがとうございました。

私どもこのB&Wのスピーカーを使い始めて、マトリックスから数えて4代目になります。個人的な感想なんですけれども、過去3代から相当飛躍したスピーカーになってるんじゃないかと思います。今後も(800Diamondは)ずっとこちらにおりますので、機会があればまたお越し頂いて、試聴していただければと思います。

それでですね、この後は隣に飲み物もご用意しておりますので、色々と澤田さんにご質問等がありましたら、お茶を飲みながら、ディスカッションをしていただければと思います。またアンケートを用意しておりまして、今回初めてこういう弊社の視聴室でイベントをさせていただいたものですから、皆さんの「こんなことやったらどうですか」というご提案も是非知りたく、アンケートを用意しました。よろしければお書きいただきたいと思います。それと、もしなにかCDなどお持ちでしたら、少しお時間がありますので、リクエストに応じて自由に視聴できるようにしたいと思います。

では今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。


追記

全四回の連載記事はいかがでしたでしょうか。

動画公開したB&W 800Diamondの試聴会では、ウーファーの解説がさらに3パートほどありましたが、弊社の不備でデータが破損しており、公開に至りませんでした。できることなら当日行われた試聴会を完全な状態で公開するつもりでした。原因はわかっていますので、次回以降はきちんと皆様に価値ある情報をお届けできると思います。是非ご期待ください。

弊社はホームシアターの施工を中心に、オーディオ機器の販売も行っております。800Diamondの試聴会ではMarantz社のフラッグシップモデルをお借りいたしましたが、通常は国産のZandenAudioSystem社の製品を使って800Diamondを展示しております。多種の製品を比較試聴することはできませんが、コンポーネントとしてクオリティの高いシステムを試聴して頂けるようご用意しております。オーディオ機器の性能判断は、リラックスした状態でお手持ちのソフトを試して頂くことが基本です。事前のご予約で、最低1時間はご試聴して頂ければと思います。是非、十分にお時間をとってお越しください。

written by Kyo_Yamada
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CCの明示:
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
B&W 800Diamond | comment by Ryuichi Sawada by HOMECINEMA&AUDIO Co., Ltd. is licensed under a Creative Commons 表示 - 非営利 - 改変禁止 2.1 日本 License.
Based on a work at homecinema.seesaa.net.



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posted by HCA at 15:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | B&W 800Diamond | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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